ほんトノトコロ

小説を中心に読書感想文を掲載します。 書評の域には達しておりませんので悪しからず。 好きな作家は江國香織、吉田修一。

吉田修一さんの作品を薦めるとしたら、まず本書を選びたい。


千歳烏山にあるマンションの一室で共同生活を営む4人を軸とした話。章ごとにそれぞれの視点で話が進められ、他者から見る各々が描かれていく。
直輝から見た良介と琴ちゃんから見た良介、未来から見た良介。大学3年生の男を見る目はそれぞれ異なる。


この斬新な構成のスタイルもさることながら、物語の進め方も読者の興味をそそる。決して共同生活者のコミュニティ内のみで毎日が動いていくのではなく、それぞれがマンション外のLIFEを過ごしているのだ。


うわべだけの付き合いだけではない、でも程よい緊張感を抱きながら生活を営む4人。そこに新たな仲間が転がり込み、敷かれた物語のレールは少しカーブを描いていく。


こんなマンションに自分も暮らせたらどんなに楽しいだろう!!


吉田修一さんの細かく、かつ共感できる心理描写、周辺描写も余すことなく満喫できるはず。何気なくスパイスの効いたキーを至るところにばらまき、その鍵は後に物語の扉を紐解く一助となる。
硬すぎず、打ち解けすぎない文体も絶妙。

東野圭吾さんもそうだけど、吉田修一さんの文章は澱みなく、かつ嫌みのない文体で紡がれていると思う。自小説が自小説っぽくなりすぎないとでも言えばいいのかな。


この作品がきっかけとなり、吉田修一さんにどっぷりとはまった僕。
吉田修一ワールドがぎゅっと詰まった本書。陳腐な形容かもしれないけれど、最高です。

95点。


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