ほんトノトコロ

小説を中心に読書感想文を掲載します。 書評の域には達しておりませんので悪しからず。 好きな作家は江國香織、吉田修一。

映画を観るにあたって湊かなえの『少女』を再読。



湊かなえ作品に当時はどっぷり浸かり、本作のインパクトの薄さを酷評していた。
五年経つと結構内容も忘れているものである。初見に近い感覚で読み進めた。


◼︎私と敦子、私と由紀


五年前に、僕はこの作品を浅薄だと評した。

いま再読してみて浮かぶ言葉は少し違う。

ミステリー要素の乏しさや、繋がりすぎている事象の関係性に物足りなさを感じつつも、二人の主人公の内面を告白した良い小説だと思う。


映画を観終わってこの感想を書いているわけだが、実写に比べると小説はその時々に起こったことについて詳細に書かれている。

日にちごとに章を分け、主語一人称の特徴を上手に利用して由紀や敦子を描く。
主眼が「私」であるから、その行動は他者と関わることで文章化される。
由紀にとっての牧瀬やタッチー&昴がそうだし、敦子にとってのおっさんもまた然りである。


自分の傷に向き合うことにウエイトを置いている映画に比べて、小説は由紀と敦子がお互いを気にし続けるある意味で外向きの作品だと思った。


◼︎救い


いま『少女』に感想を述べるなら「救い」という言葉を使いたい。

映画のキャッチコピーでも謳われた「死に触れてみたい」という部分は作品の核ではあるものの、それだけで片付けてしまうにはもったいない。
敦子はなぜ諦めたのか。敦子はどのように光を求めていくのか。

由紀が小説の中で記した夜明けのくだりはこの作品自体を照らすものだと感じた。



これから映画を観るので本書を読もうと考えている人は、ぜひ小説から読んでほしい。

トントン拍子に都合よく進みすぎる感のある小説から、映画は何を抽出したのか。

良し悪しは別として、読了後にある程度の重さを感じる小説だと思う。
その重さを持ったまま、映画を観ていただきたい。

レビューでも述べる予定だが、良い映画だったと思う。
それは原作を読んで「親友」とか「生死」とかの重量を感じたからこその感想。


湊かなえ作品は概してそうですが、本書もまた、ページを戻って擦り合わせをしたくなる作品でした。

80点。




湊 かなえ
2012-02-16

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