ほんトノトコロ

小説を中心に読書感想文を掲載します。 書評の域には達しておりませんので悪しからず。 好きな作家は江國香織、吉田修一。

意外にもまだ読んだことがなかった伊坂の『陽気なギャングが地球を回す』。
僕の中での「これぞ、伊坂幸太郎!」というイメージを具現化したような作品だった。


成瀬、久遠、響野、雪子の四人がそれぞれリレー形式に主語を担う形ではあるが、あくまでもその章の主人公をばらばらにしているだけで作品として筋が外れることは全くない。
むしろ章始まりの小見出しを見逃すと、その章の主眼は誰だったっけ?となるくらい。
その迷いを打ち消してくれるのが成瀬「は」と、成瀬「が」という格助詞の違いだろう。

基本的な助詞の使い方ではあるが、わかりにくい作家もいる中でさすがの読みやすさである。



ストーリーは慎一関連が少々蛇足かなと思った程度で、強盗の爽快感はたまらなかった。
特に響野のパフォーマンス。
早口でとうとうと喋り続ける彼のキャラクターは、仕事に徹する四人の中で異彩を放つ一方で、タイトルにある陽気さと地球を回す感を示してくれた。


成瀬の嘘を見抜く力、久遠のスリ能力、雪子の精確な体内時計といった特殊能力も凄かったし、強盗には必要なのだけど。
響野の演説。それが可能にするたまらなく痛快な劇場型犯罪。
そして伊坂の得意な終盤の大展開につながっていく。


映画も観たのであらすじを含めて比較してみる。
快感を刺激する会心作。
95点。


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