ほんトノトコロ

小説を中心に読書感想文を掲載します。 書評の域には達しておりませんので悪しからず。 好きな作家は江國香織、吉田修一。

久しぶりに山田悠介の本を読んでみた。『パズル』。実写化もされたようだ。


山田悠介は『リアル鬼ごっこ』を5年前に読んだ以来。
設定はとても魅力的で平易な文章でスイスイ読めるが、あまりにも平易過ぎる、そんな印象があった。

今回の作品も10年前に描かれているだけあって、文章に多くは望めなかった。蛇足な人物描写が多くて、色々と情報は与えてくれているのだけど、リンクしないから浮いてしまう。



ただし、その豊富な人物描写はキャラクターの一人一人に細かく生命を与えている証拠であって、たとえストーリーと密接に関わらない脇役でも読者としては鮮明にその生徒像が再現できる。
これは実写化には特に有効だし、脇役に個性を与えるという点で僕は好き。繰り返しになるけど、それがリンクしていけばもっと良かったけど。


展開は期待通りのものだけど、余計な脱線がない分、それを確認したくてページをめくるペースが早くなる。後書きでも書いていたけど、ゲーム性に絞っていて奇をてらっていないのでエンターテイメントとしては非常に魅力的だった。


あれから10年。いまの山田悠介の作風とは、どんなものだろう。肯定的な感触を抱かせてくれる作品でした。


75点。


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