ほんトノトコロ

小説を中心に読書感想文を掲載します。 書評の域には達しておりませんので悪しからず。 好きな作家は江國香織、吉田修一。

久しぶりの書評エントリーと思ったら、何と実に一年ぶり。 

漫画はこの一年そこそこ読んできたものの、ここまで本を読まなかったとは恐ろしい。
とは言いつつも、ゼロの訳ではなくて辻村深月を再読したり、三浦しをんと新堂冬樹を途中まで読んだりと暇つぶし程度には読んでいたが、読み終わらずに何ヶ月も放置してあって結局次にページを開く頃には最初から読み直しなんだろうなと思う。


さて、読んだ一冊は今秋映画化された伊坂幸太郎の『グラスホッパー』。
安定の伊坂。僕の中では確実に70点以上取ってくる作家さんだ。


『グラスホッパー』は比較的初期の作品である。
だからか、スピード感のあるチェイシングの割には意外性がなかった。
全くないこともないんだけど、僕が何となく伊坂作品に抱いている手のひら返しはなかった。

その一方で洋楽歌手のセリフに全てをかこつけて話す岩西という男や主人公・鈴木の章などはとっても伊坂テイストが強かった。3人の人物がだんだん点から線になっていく様は映像化に向いている。


物語の目的として当初の「鈴木による寺原への復讐」からは少し逸れてしまったのが減点材料。
現実と幻覚の境を彷徨い、どちらがうつつかわからなくなってしまうあたりの描写は好きだ。
横断歩道の信号がずっと点滅している。
ホームを横切る通過列車がいつまでたっても終わらない。

昔、夢の中に踏切が永遠に鳴り続け、遮断機が下りた状態だというものが出てきたことがある。
その次の日から踏切を見ると永遠に開かないのではないか。ならば突っ込んで渡るしかないのではないかという幻覚に襲われた。

夢を覚えていることは必ずしも悪いことではないが、良くない場合が多い。
結局夢と現実の区別がつかなくなり、想像世界に囚われてしまうから。

終わり方はこれも僕の勝手なイメージの伊坂王道とは少し異なっていた。

2日であっさり読めたのでやはりページを進ませてのめり込ませるのはさすがだと思う。

80点。



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