ほんトノトコロ

小説を中心に読書感想文を掲載します。 書評の域には達しておりませんので悪しからず。 好きな作家は江國香織、吉田修一。

『グラスホッパー』の続編ともいえるべく『マリアビートル』を読了。こちらは丸一日使って一気読み。


『グラスホッパー』に比べると、新幹線内という限定空間の中での話がゆえ、スピード感とスリリングは上。
その一方でやや荒唐無稽というか現実には無理じゃない?という箇所もいくつか。


この作品に出てくる「王子」という男子中学生は、マインドコントロールが得意な知能犯。よくありがちなパターンではあるが彼は美少年として描かれた。
現実の少年犯罪においても王子のような知能犯はいただろう。

『マリアビートル』の欠点は王子をあまりにも完全無欠の存在として、しかも生き長らえさせてしまったことだと思う。

挑発とマインドコントロールによって優位性を得ようとする人間は一番危険である。
一番異常である。一番卑劣である。
それを、本作において作者は王子に対していくばくかの正義を与えていたかのようにも見えた。
強運、端正な顔立ち、相手の命綱を掌握する狡猾さ。
しつこいほどに不運を強調された七尾という男の運を食い潰すかのように王子はスルスルと生き続けた。


僕個人の感覚であれば、王子は檸檬のシールを見つけた蜜柑によって殺されるべきだった。あるいは半殺しになった上で、最後に老夫婦に引き渡されればよかった。
しかし、王子は木村と檸檬と蜜柑の壁を乗り越えた。ちょっと生きすぎだ。これじゃあがっかり。



読み応えはあった。面白かった。
ただし不屈のヒーローと悪役を描くのが上手な伊坂幸太郎にしては、悪への、しかも結構タチの悪い悪役への依存が強い作品に思えた。


辛めに評価は70点。

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